地爪診断システムの開発支援|紙のカウンセリング120項目を、施術中のスマホで完結させる
地爪診断システム
- 支援範囲
- システム開発
ネイル用品ブランド向けに、サロンのネイリストが顧客の「地爪の健康状態」をその場でスコア化・可視化できるWebシステムをスクラッチ開発しました。従来は紙のカウンセリングシートに12項目×指10本=120項目をチェックし、集計はネイリストの手作業。これをスマートフォンだけで完結させ、診断結果をチャートで顧客に見せられるようにした事例です。Webサイト制作ではなく、システム開発として携わりました。
プロジェクト概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | ネイル用品ブランド(全国のネイルサロンへ卸・BtoB) |
| atmeの立場 | 制作会社からの受託。開発・UIデザイン・進行管理を担当 |
| 期間 | 2022年9月〜2023年1月(デザイン着手〜本番運用開始) |
| 体制 | ディレクション1名・デザイナー1名・エンジニア複数名(パートナー含む) |
| 技術 | PHP / Laravel、レンタルサーバー、スマートフォン最適化 |
| 規模 | 導入予定サロン100社規模でスタート |
| 公開範囲 | クローズド(検索エンジンにインデックスさせない会員制) |
課題と解決策
ブランドが提供する「地爪診断」は、ネイリストが顧客の爪の状態をカウンセリングし、ケア提案につなげるサービスです。仕組み自体は紙で完成していましたが、現場では3つが詰まっていました。
- 入力と集計が手作業 — 12項目×指10本のチェック結果を、ネイリストが紙の上で集計していた
- 顧客に見せられるアウトプットがない — その場でスコアや根拠を提示できず、ケア提案の説得力が出ない
- 記録が蓄積されない — 店舗ごとに紙で保管されるため、前回と比較して「爪が良くなったか」を見せられない
加えて「項目数を減らせば入力は楽になるが、プロに診てもらう特別感がなくなる」というジレンマがありました。そこで項目は1つも減らさず、入力の負担と集計だけを機械に渡す方針で設計しています。

詳細なプロジェクトプロセス
プランニング
最初に決めたのは「どのCMSで作るか」ではなく「誰がどんな状況で触るか」でした。ネイリストは施術中に片手でスマートフォンを操作し、そのまま画面を顧客に向けて見せます。この使い方を前提に置いた時点で、既存CMSの管理画面をカスタマイズする方向は現実的ではないと判断しました。
同時に、次の3つが要件として確定しました。
- ネイリストごとにアカウントを分け、自分の顧客の情報しか見えない権限設計
- 検索エンジンにインデックスさせないクローズド運用(アカウントは本部が発行・管理)
- 紙のチェック項目と集計ルールをそのまま移植できる、独自スコアロジック
デザイン
全16画面をスマートフォン優先で設計しました。デザイン確定までに、トンマナ確認 → 全画面デザイン → 3回の修正を重ねています。ブランド側の用語ルール(サービス名称の表記統一など)も、デザイン段階ですべて反映しました。
余白やフォントのばらつきは最終提出前にまとめて統一し、タイトル下の余白を40pxで揃えるなど、画面をまたいでも印象が変わらない状態にしてから実装に渡しています。
開発
PHP / Laravel でスクラッチ開発しました。実装した主な機能は次のとおりです。

| 利用者 | 実装した機能 |
|---|---|
| ネイリスト | ログイン/顧客の登録・編集/地爪スコアの新規登録(120項目のチェック入力)/スコア自動算定/結果画面(3軸スコア+レーダーチャート+円グラフ)/過去スコアの履歴閲覧/結果のSNSシェア/パスワード再発行 |
| ブランド本部(管理者) | ネイリストアカウントの登録・編集/一覧のCSVダウンロード/利用状況の確認 |
| 共通 | 初回ログイン時の使用許諾同意フロー(同意しないと利用を開始できない) |
スコアの仕組み
チェック結果は「爪の厚み」「フォルム」「乾燥」の3軸に振り分けられ、それぞれ5点満点に換算されます。チェックが多いほど点数が下がる仕組みです。

ここは開発の後半で一度チューニングしています。実際にモデルの方10名ほどに体験してもらったところ「スコアが良く出すぎる」という声が多く、判定レンジを調整して現場の実感に合わせました。ロジックは作って終わりではなく、実際の爪で検証して初めて使える状態になります。
テストとデプロイ
テスト環境で確認 → 本番環境へ反映、という二段構えで進めました。本番反映の際は安全のため1時間程度のダウンタイムを設定し、すでにサロンで利用が始まっていたため事前に日時を合意してから作業しています。
展示会から逆算した進め方
この案件には「10月末の業界展示会でお披露目したい」という動かせない日程がありました。そこで全機能の完成を待たず、段階的に出す進行に切り替えています。
| 時期 | マイルストーン |
|---|---|
| 2022年9月 | UIデザイン制作・確定(全16画面) |
| 2022年10月下旬 | テスト環境公開 → プレオープン(社内デモ・セミナー利用) |
| 2022年10月末 | 業界展示会でデモンストレーション展示 |
| 2022年11月 | 本番環境リリース・サロンへのアカウント配布開始 |
| 2022年12月 | 使用許諾同意フローなどの追加開発 |
| 2023年1月 | 追加機能を本番反映・運用移行 |
展示会は「触らせる場」ではなく「デモで見せる場」と割り切り、その範囲に必要な機能を優先実装。顧客が実際に触る本番公開は約2週間後に設定しました。期日に合わせて機能を削るのではなく、期日ごとに「誰が何をする場か」を決めて必要範囲を揃えるやり方です。
成果
- 紙のカウンセリングシートによる120項目の手集計を廃止し、入力から結果表示までをスマートフォン1台で完結
- 診断結果をその場でチャート提示できるようになり、ケア提案の根拠を顧客と共有できる状態に
- 顧客ごとにスコアが蓄積され、前回との比較(爪が良くなったか)を見せられるように
- 結果画面のSNSシェアにより、サロン店頭から外への導線が生まれた
- リリース時点で導入予定サロンは100社規模
この案件から標準化した3つのこと
受託開発で起きやすい詰まりを、この案件をきっかけに社内ルール化しました。現在はすべての案件で標準運用しています。
- 本番サーバーの事前検証を、着手前に必ず行う
本件では開発終盤に、本番用サーバーの対応PHPバージョンがフレームワークの要件を満たさないことが判明しました。以降は契約直後に本番環境の情報を取得し、本番と同条件の検証環境で動作確認してから設計を確定しています。
- テスト仕様書(正常系・異常系)をつくり、テスト環境→本番の二段で検証する
画面ごとに正常系・異常系のテスト項目を一覧化し、テスト環境で全項目クリア→本番反映→本番でも同じ項目を再確認、という手順を定型化しました。仕様書はクライアントにも共有し、第三者の目で同じ項目を検証できる状態にしています。
- 課題管理表をステータスで回す
課題を1枚のシートに集約し、「対応中 → 当社確認 → クライアント確認待ち → 完了」の4ステータスで管理。いま誰のボールかが常に見える状態にすることで、複数社が関わる進行でも認識のズレが起きにくくなります。
よくある質問
Q. 紙の帳票をそのままシステムにできますか?
A. できます。本件も紙のカウンセリングシートと集計ルールが完成していたため、それをそのまま仕様書として扱いました。すでに現場で回っている紙の運用がある案件は、実は最もシステム化しやすいパターンです。
Q. WordPressなどのCMSでは作れないのですか?
A. 作れる場合もあります。判断基準は機能数ではなく「誰がどんな状況で触るか」です。本件は施術中に片手で入力し、そのまま顧客に見せるという使い方だったため、専用に作るほうが結果的に速く・壊れにくくなると判断しました。
Q. 検索に出したくない会員制システムも作れますか?
A. 可能です。本件は検索エンジンにインデックスさせないクローズド運用で、アカウントはブランド本部が発行・管理する設計にしています。
Q. リリース後の改修や運用も頼めますか?
A. はい。本件もリリース後に使用許諾同意フローの追加、エラー表示の改善、本番反映作業などを継続して担当しました。当社は月額での運用・改修まで含めてお引き受けしています。
同じような悩みを抱える企業の皆様へ
「紙の帳票が現場で回っているが、集計が手作業で限界」「顧客にその場で見せられる結果をつくりたい」「店舗・加盟店ごとにアカウントを分けたい」——このようなご相談を承っています。まずは現在使っている紙の運用をそのまま見せていただければ、システム化の範囲と概算をお出しします。
※本記事はクライアントとの守秘に配慮し、社名を伏せて掲載しています。内容・期間はいずれも実案件の記録に基づくものです(2022年9月〜2023年1月)。
